高額療養費は自動で安くなる制度ではない?窓口で全額払わないための2つの方法

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※本記事は情報提供を目的とした一般的な制度解説であり、個別の医療費・手続きについて保証するものではありません。また、生命保険の無料相談サービスへのアフィリエイト広告を含みます。

この記事の要点

  • 高額療養費は自動計算ではなく、マイナ保険証か「限度額適用認定証」がないと、窓口ではいったん医療費を全額(3割分)支払うことになります。
  • 認定証なしで払い戻しを申請する場合、診療月から3か月以上かかります(協会けんぽ)。
  • 70歳未満の自己負担限度額は所得に応じて5区分(ア〜オ)、令和8年8月〜令和9年7月は例えば標準報酬月額28万〜50万円の方で85,800円+(総医療費-286,000円)×1%です。
  • 直近12か月で高額療養費に3回該当すると、4回目から自己負担限度額がさらに下がります(多数回該当)。
  • 令和8年8月から「年間上限額」が新設されましたが、その支給申請の受付開始は令和9年8月からです(協会けんぽ)。

最終更新:2026年9月16日 / 記事の作成・確認:Asset Lab 編集部(出典は記事末尾に記載)

「高額療養費があるから、医療費は自動的に一定額までしかかからない」——そう思っていませんか。実際には、窓口で自己負担限度額までしか請求されないのは、マイナ保険証か「限度額適用認定証」を提示した場合だけです。何も準備していないと、退院時に医療費をいったん全額支払い、後日申請して払い戻しを受けることになります。この記事では、自己負担限度額の実際の金額、窓口で損をしない2つの方法、そして令和8年8月・令和9年8月に予定されている制度改正のポイントを整理します。

高額療養費制度とは

高額療養費制度は、同じ月にかかった医療費の自己負担額が一定額(自己負担限度額)を超えた場合に、超えた分が払い戻される公的医療保険の給付です。協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険のいずれでも、区分の考え方は共通です。

ただし、差額ベッド代(個室代)、入院時の食事代、先進医療の技術料は対象外で、これらは高額療養費の対象にも限度額適用認定証の対象にもなりません。この「対象外費用」の考え方と、民間の医療保険でどこまで備えるべきかについては、生命保険は本当に必要か(記事)で詳しく整理しています。

自己負担限度額はいくら?(令和8年8月〜令和9年7月)

70歳未満の方の区分です。〈 〉内は後述する「多数回該当」の場合の金額です。

区分(標準報酬月額)自己負担限度額年間上限額
ア:83万円以上270,300円+(総医療費-901,000円)×1%〈140,100円〉168万円
イ:53万〜79万円179,100円+(総医療費-597,000円)×1%〈93,000円〉111万円
ウ:28万〜50万円85,800円+(総医療費-286,000円)×1%〈44,400円〉53万円
エ:26万円以下61,500円〈44,400円〉53万円※
オ:低所得者(住民税非課税等)36,900円〈24,600円〉29万円

※「エ」区分のうち、標準報酬月額が15万円以下であることが確認できた方は年間上限41万円が適用されますが、この分は令和9年8月以降にまとめて償還払い(後払い)される扱いです(協会けんぽ)。総医療費とは、保険が適用される診療費用の総額(10割)を指します。

70歳以上の方は、外来(個人ごと)と、入院を含む世帯合算とで上限が別々に設定されているのが70歳未満との大きな違いです。

区分個人ごと(外来)月額世帯ごと(入院含む)月額年間上限
現役並み所得者(3段階)70歳未満の「ア〜ウ」と同じ計算式168万/111万/53万円
一般(標準報酬月額26万円以下)22,000円(年間上限216,000円)61,500円〈44,400円〉53万円※
低所得者Ⅱ11,000円(年間上限96,000円)25,700円〈24,600円〉29万円
低所得者Ⅰ8,000円15,700円18万円

※一般区分のうち標準報酬月額15万円以下の方は、70歳未満と同様に年間上限41万円が令和9年8月以降の償還払いで適用されます。(出典:協会けんぽ「高額療養費」)

窓口の支払いを限度額までに抑える2つの方法

上の表の金額は、何もしなくても自動的に窓口の支払いに反映されるわけではありません。次の2つの方法のどちらかを使わないと、いったん医療費の3割(または年齢に応じた割合)を全額支払うことになります。

  • 方法① マイナ保険証を使う:オンライン資格確認を導入している医療機関で、マイナ保険証(健康保険証利用登録をしたマイナンバーカード)を提示すれば、事前申請なしで窓口の支払いが自己負担限度額までに抑えられます。
  • 方法② 限度額適用認定証を使う:オンライン資格確認未導入の医療機関を受診する場合や、マイナンバーの登録が済んでいない場合は、事前に協会けんぽ(または加入健保)へ申請して「限度額適用認定証」の交付を受け、窓口で提示します。申請から交付まで日数がかかるため、入院・手術の予定が決まったら早めに申請するのが安全です。

どちらも使わずに医療機関の窓口で医療費を全額支払った場合は、後日「高額療養費支給申請書」を提出すれば超過分の払い戻しを受けられます。ただし協会けんぽによれば、診療報酬明細書の確認が必要なため、払い戻しまでには診療を受けた月から3か月以上かかります。まとまった立て替え資金が用意できない場合は、高額療養費支給見込額の8割相当を無利子で借りられる「高額医療費貸付制度」もありますが、まずはマイナ保険証か認定証で立て替え自体を避けるのが手間も資金負担も少ない方法です。

なお、被保険者が住民税非課税などの低所得者に該当する場合は、マイナ保険証を使う場合でも別途「限度額適用・標準負担額減額認定証」の申請が必要です(低所得区分の適用にはこの認定証が必須のため)。

多数回該当で4回目から負担が下がる仕組み

直近12か月の間に高額療養費の支給(限度額適用認定証を使って自己負担限度額を払った場合を含む)が3回以上あった場合、4回目からは自己負担限度額がさらに軽減されます。これを「多数回該当」といい、上の表の〈 〉内の金額が適用されます。

例えば、区分ウ(標準報酬月額28万〜50万円)の方が、月80万円の総医療費がかかる入院を3か月連続で受けたケースで計算してみます。

  • 1〜3か月目:85,800円+(800,000円-286,000円)×1%=90,940円/月(3か月で272,820円)
  • 4か月目も同条件が続いた場合:多数回該当により44,400円に軽減(年間上限53万円にはまだ達しません)

多数回該当は同一の保険者・同一の被保険者であることが条件です。転職などで国民健康保険や他の健康保険組合から協会けんぽに変わった場合、退職して被保険者から被扶養者に変わった場合は、それまでの該当回数は引き継がれません。

令和8年8月・令和9年8月の改正ポイント

高額療養費制度は令和8年8月と令和9年8月の2段階で見直されます。ポイントは「年間上限額の新設」と「その申請開始時期のズレ」です。

  • 令和8年8月〜:低所得者への配慮をしつつ、月額の自己負担限度額を医療費の伸びに応じて見直し。あわせて、長期療養者が将来の負担の見通しを立てやすいよう「年間上限額」を新設(上の表の右列)。
  • 令和9年8月〜:所得区分をより細かく分け、標準報酬月額15万円以下の方の多数回該当の金額を引き下げ。あわせて、令和8年8月分からの年間上限額の支給申請の受付もこの時期から開始。

つまり、令和8年8月〜令和9年7月の間に年間の自己負担額が上限を超えても、その分の払い戻し申請書自体がまだ用意されておらず、実際に申請できるのは令和9年8月以降になります。「年間上限を超えたのにいつまでも戻ってこない」と慌てないよう、時期のズレとして覚えておくとよいでしょう。制度見直しの詳細は厚生労働省のホームページでも案内されています。

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免責事項

本記事は公的医療保険制度の一般的な解説であり、個別の医療費・手続きの結果を保証するものではありません。制度の詳細は今後変更される可能性があるため、最新情報は加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険等)の窓口や公式サイトでご確認ください。

出典

よくある質問

Q. マイナ保険証を持っていれば、限度額適用認定証は不要ですか?

オンライン資格確認を導入している医療機関であれば、マイナ保険証の提示だけで窓口の支払いが自己負担限度額までに抑えられ、認定証の事前申請は不要です。ただし、オンライン資格確認未導入の医療機関を受診する場合や、低所得区分の適用を受ける場合は、別途「限度額適用認定証」(または「限度額適用・標準負担額減額認定証」)の申請が必要です。

Q. 認定証もマイナ保険証も使わずに医療費を全額払ってしまいました。払い戻しは受けられますか?

受けられます。「高額療養費支給申請書」を提出すれば、自己負担限度額を超えた分が払い戻されます。ただし、協会けんぽによれば診療報酬明細書の確認が必要なため、払い戻しまでには診療を受けた月から3か月以上かかります。

Q. 高額療養費の自己負担限度額は、年収でいくらですか?

正確には年収ではなく「標準報酬月額」(会社員の場合はおおむね月給ベース)や、国民健康保険では前年の所得で区分が決まります。令和8年8月〜令和9年7月は70歳未満で5区分(ア〜オ)あり、例えば標準報酬月額28万〜50万円の方は85,800円+(総医療費-286,000円)×1%です。

Q. 多数回該当とは何ですか?

直近12か月の間に高額療養費の支給を3回以上受けた場合、4回目以降の自己負担限度額がさらに軽減される仕組みです。転職などで加入する健康保険が変わったり、被保険者から被扶養者に変わったりすると、該当回数は引き継がれません。

Q. 令和8年8月にできた「年間上限額」は、いつから申請できますか?

年間上限額そのものは令和8年8月分から適用されますが、支給申請の受付開始は令和9年8月からです。令和8年8月〜令和9年7月分の年間上限超過分は、令和9年8月以降にまとめて申請することになります。