iDeCoの受け取り方|一時金・年金の税金の計算と、退職金との順序

iDeCoの一時金と年金の受け取り方と、退職所得控除の順序を整理する記事の見出し画像 資産形成・NISA

この記事の結論

  • iDeCoを一時金で受け取ると退職所得、年金の形で受け取ると公的年金等の雑所得として、税金を計算します。差し引ける控除が違います。
  • 会社の退職金もある人は、受け取る順序と間隔で、退職所得控除額が変わります。退職金が先なら「前年以前19年内」、iDeCoの一時金が先なら「前年以前9年内」(2026年1月1日以後に受け取った一時金の場合)に受け取っていると、控除額が減ります。
  • どの受け取り方が合うかは、退職金の額と時期、iDeCoの加入者期間、ほかの年金の額で変わります。受け取る前に、自分の数字で確かめてください。

数値と条件は、2026年10月時点の国税庁・財務省・総務省・国民年金基金連合会・松井証券の記載です(確認日:2026年10月5日・6日)。試算は概算で、実際の税額とは一致しません。この記事に広告リンクはありません。

こんな人向け

  • iDeCoに加入していて、受け取り方を考え始めた人
  • 会社の退職金とiDeCoの両方を受け取る予定の人
  • 「5年空ければよい」と聞いたことがあり、いまの決まりを確かめたい人

向かない人

  • 自分の税額を確定させたい人(税務署か税理士に相談してください)
  • これからiDeCoを始めるかを決めたい人(掛金と所得控除は、iDeCoの所得控除の試算にまとめています)

iDeCoはいつから、どんな形で受け取れる?

受け取りを始められる年齢は、加入していた期間(通算加入者等期間)で決まります。受け取りの開始は、75歳になるまでの間で選べます。

通算加入者等期間受け取りを始められる年齢
10年以上60歳
8年以上10年未満61歳
6年以上8年未満62歳
4年以上6年未満63歳
2年以上4年未満64歳
1か月以上2年未満65歳

60歳以上で初めて加入した人は、加入から5年を経過した後に受け取れます。

受け取り方は3つです。

  • 一時金:まとめて1回で受け取ります。
  • 年金:5年以上20年以下の期間で、分けて受け取ります。金融機関によっては、終身で受け取る方法もあります。
  • 併用:一部を一時金、残りを年金で受け取ります。扱っていない金融機関もあります。

受け取るには、自分で請求します

  • 請求先は、記録関連運営管理機関です。連絡先は「年金資産の残高の通知」などに書かれています。
  • 75歳までに請求しなかった場合、資産は法務局に供託されます。

一時金で受け取ると、税金はどう計算される?

iDeCoの老齢給付金を一時金で受け取ると、退職所得とみなされます。受け取った金額から退職所得控除額を引き、原則として、その2分の1に税金がかかります。

退職所得の金額と、退職所得控除額(国税庁、2026年4月1日現在の法令)

退職所得の金額 =(受け取る金額 − 退職所得控除額)× 1/2

年数が20年以下:40万円 × 年数(80万円に満たない場合は80万円)

年数が20年超:800万円 + 70万円 ×(年数 − 20年)

iDeCoの一時金では、この「年数」に加入者期間を使います。企業型の確定拠出年金に加入していた期間がある場合は、重ならない期間を合算します。1年に満たない端数は、1年に切り上げます。

計算の例(会社の退職金がない場合)

前提:加入者期間20年、一時金600万円

退職所得控除額 = 40万円 × 20年 = 800万円

600万円は800万円より少ないので、退職所得は0円です。

退職所得には、所得税のほかに住民税(市町村民税6%、道府県民税4%)がかかります。

「退職所得の受給に関する申告書」を出す

  • 申告書を出さないと、受け取る金額の20.42%が源泉徴収されます。その場合は、確定申告で精算します。
  • 申告書には、ほかに受け取った退職金や一時金を書きます。書き方は、支払いをする機関の案内に従ってください。

年金で受け取ると、税金はどう計算される?

iDeCoの老齢給付金を年金の形で受け取ると、「公的年金等」に当たり、雑所得として計算します。その年に受け取った公的年金等の合計から、公的年金等控除額を引きます。国民年金や厚生年金の年金も、公的年金等に含まれます。

年齢と、公的年金等の収入の合計公的年金等控除額
65歳未満で、130万円以下60万円
65歳以上で、330万円以下110万円

この表は、公的年金等以外の所得が1,000万円以下の場合です。収入の合計がこの金額を超えると、控除額は別の式で計算します。式は、国税庁のページで確認できます。

年金で受け取る場合の手数料

  • 松井証券は、給付の手数料を「1回あたり440円」と案内しています(2026年10月時点)。
  • 年金で受け取る場合に、受け取りのたびにかかるかどうかは、公式のページで確認できていません。受け取りの回数と手数料は、口座のある金融機関に確認してください。
  • 受け取りを待つ間も、口座の管理の手数料(信託銀行の月66円など)はかかります。

会社の退職金もある場合は、順序と間隔で控除額が変わる

iDeCoの一時金と会社の退職金は、どちらも退職所得です。一定の期間内に両方を受け取ると、期間が重なる分だけ、後から受け取るほうの退職所得控除額が減ります。さかのぼる期間は、受け取る順序で違います。

受け取る順序さかのぼる期間
退職金が先、iDeCoの一時金が後前年以前19年内
iDeCoの一時金が先、退職金が後(一時金を2026年1月1日以後に受け取った場合)前年以前9年内
iDeCoの一時金が先、退職金が後(一時金を2025年12月31日までに受け取った場合)前年以前4年内

「前年以前9年内」は、令和7年度の税制改正で決まりました。それまでは4年内だったため、「iDeCoを先に受け取り、5年空けて退職金を受け取る」と、控除額は減りませんでした。2026年1月1日以後に受け取る一時金には、この方法は当てはまりません。

控除額はいくら減る?

減るのは、重なる期間の年数(1年未満は切り捨て)をもとに計算した、退職所得控除額に当たる金額です。

先に受け取った金額が、そのときの退職所得控除額より少なかった場合は、重なる期間を短く数えます。先に受け取った金額が800万円以下なら、「受け取った金額 ÷ 40万円」(1未満は切り捨て)の年数で計算します。

計算の例(iDeCoの一時金が先、5年後に退職金)

前提:60歳でiDeCoの一時金600万円(加入者期間20年。2026年1月1日以後の受け取り)。65歳で退職金1,500万円(勤続38年。iDeCoの加入者期間はすべて勤続期間と重なる)

1. 勤続38年の退職所得控除額 = 800万円 + 70万円 × 18年 = 2,060万円

2. 重なる期間 = 600万円 ÷ 40万円 = 15年(600万円は、20年分の控除額800万円より少ないため)

3. 減る金額 = 40万円 × 15年 = 600万円

4. 退職所得控除額 = 2,060万円 − 600万円 = 1,460万円

5. 退職所得 =(1,500万円 − 1,460万円)× 1/2 = 20万円

6. 税金 = 所得税と復興特別所得税 20万円 × 5% × 1.021 = 10,210円、住民税 20万円 × 10% = 20,000円、合計 約3.0万円

同じ前提で、改正前の決まり(4年内)なら、5年空いているので控除額は減らず、退職金の退職所得は0円でした。この例では、改正によって約3.0万円の差が出ます。

試算の前提

  • iDeCoの一時金600万円そのものは、控除額800万円に収まるので、退職所得は0円です。
  • 退職金やiDeCoの金額が大きいほど、減る控除額と税金は大きくなります。先に受け取った金額が控除額以上の場合は、重なる期間を短く数える決まりは使えません。
  • 2027年分からは、復興特別所得税が1.1%になり、防衛特別所得税1%が加わります。合わせた率は2.1%で、この計算は変わりません。
  • 重なる期間は、加入や入社の日付で変わります。実際の計算は、退職金を支払う会社や税務署に確認してください。

同じ年に退職金とiDeCoの一時金を受け取る場合は、2つを合計して計算します。後から支払う側に、申告書と、先に受け取った分の源泉徴収票を出します。

自分の場合を確かめる手順

  1. iDeCoの加入者期間と残高を確認する

    「年金資産の残高の通知」や、金融機関の加入者向けのサイトで確認します。企業型の確定拠出年金から移した資産がある場合は、その期間も確認します。

  2. 会社の退職金の見込み額と、受け取る時期を確認する

    勤め先の退職金の決まりで、金額と支払いの時期、勤続年数の数え方を確認します。

  3. 順序と間隔を、上の表に当てはめる

    退職金が先か、iDeCoの一時金が先か。その間が19年内か、9年内か。当てはまる場合は、控除額が減る前提で計算します。

  4. 年金で受け取る場合は、ほかの年金と合計する

    iDeCoの年金は、国民年金や厚生年金の年金と合計して、公的年金等控除額を引きます。受け取る年ごとに、合計がいくらになるかを見ます。

  5. 金融機関に、選べる受け取り方と手数料を確認する

    併用ができるか、年金の期間と回数、給付の手数料のかかり方は、金融機関ごとに違います。

注意点

受け取り方を決める前に

  • 「どちらが有利か」は、人によって変わります。退職金の額と時期、加入者期間、ほかの年金や給与の額で、税金は大きく変わります。
  • 税制は変わることがあります。受け取るときの決まりで計算されます。

よくある質問

一時金と年金は、どちらで受け取るのがよいですか?

条件によって変わります。一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除を使うので、退職金の額と時期、加入者期間、ほかの年金の額を当てはめて比べる必要があります。この記事の手順で、自分の数字を確認してください。

iDeCoを先に受け取り、5年空けて退職金を受け取れば、控除額は減りませんか?

2026年1月1日以後にiDeCoの一時金を受け取った場合は、減ります。退職金を受け取る年の「前年以前9年内」に一時金を受け取っていると、重なる期間の分だけ控除額が減ります。

60歳になったら、すぐに受け取らないといけませんか?

受け取りの開始は、75歳になるまでの間で選べます。75歳までに請求しなかった場合、資産は法務局に供託されます。

退職金とiDeCoの一時金を、同じ年に受け取るとどうなりますか?

2つを合計して、退職所得を計算します。勤続年数は、最も長い期間に、重ならない期間を足して数えます。

「退職所得の受給に関する申告書」を出し忘れたら、どうなりますか?

受け取る金額の20.42%が源泉徴収されます。確定申告をすると、申告書を出した場合と同じ計算で精算されます。

家計診断では、iDeCoを含めて、見直しの余地が大きい順に確認できます。

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出典

更新履歴

  • 2026年10月6日:公式サイトで確認し直し、全体を書き直しました。以前の記事は、改正後の税金の増え方を「約18.1万円」と試算していましたが、国税庁の決まり(先に受け取った金額が控除額より少ない場合は、重なる期間を短く数える)を当てはめておらず、同じ前提で約3.0万円に訂正しました。「50歳を過ぎて加入すると60歳では受け取れない」という記述は、通算加入者等期間で決まるため削除しました。社会保険料と公的年金の繰下げについての記述は、この記事で確認できる範囲を超えるため削除しました。広告リンクは外しました。

本記事は、官公庁と金融機関の公式サイトの情報と、それにもとづく試算で構成しています。試算は一定の前提を置いた概算で、実際の税額や将来の結果を保証するものではありません。税制と制度は変わることがあります。受け取り方を決める前に、口座のある金融機関、退職金を支払う会社、税務署で、最新の内容を確認してください。