この記事の結論
- iDeCoを一時金で受け取ると退職所得、年金の形で受け取ると公的年金等の雑所得として、税金を計算します。差し引ける控除が違います。
- 会社の退職金もある人は、受け取る順序と間隔で、退職所得控除額が変わります。退職金が先なら「前年以前19年内」、iDeCoの一時金が先なら「前年以前9年内」(2026年1月1日以後に受け取った一時金の場合)に受け取っていると、控除額が減ります。
- どの受け取り方が合うかは、退職金の額と時期、iDeCoの加入者期間、ほかの年金の額で変わります。受け取る前に、自分の数字で確かめてください。
こんな人向け
- iDeCoに加入していて、受け取り方を考え始めた人
- 会社の退職金とiDeCoの両方を受け取る予定の人
- 「5年空ければよい」と聞いたことがあり、いまの決まりを確かめたい人
向かない人
- 自分の税額を確定させたい人(税務署か税理士に相談してください)
- これからiDeCoを始めるかを決めたい人(掛金と所得控除は、iDeCoの所得控除の試算にまとめています)
iDeCoはいつから、どんな形で受け取れる?
受け取りを始められる年齢は、加入していた期間(通算加入者等期間)で決まります。受け取りの開始は、75歳になるまでの間で選べます。
| 通算加入者等期間 | 受け取りを始められる年齢 |
|---|---|
| 10年以上 | 60歳 |
| 8年以上10年未満 | 61歳 |
| 6年以上8年未満 | 62歳 |
| 4年以上6年未満 | 63歳 |
| 2年以上4年未満 | 64歳 |
| 1か月以上2年未満 | 65歳 |
60歳以上で初めて加入した人は、加入から5年を経過した後に受け取れます。
受け取り方は3つです。
- 一時金:まとめて1回で受け取ります。
- 年金:5年以上20年以下の期間で、分けて受け取ります。金融機関によっては、終身で受け取る方法もあります。
- 併用:一部を一時金、残りを年金で受け取ります。扱っていない金融機関もあります。
受け取るには、自分で請求します
- 請求先は、記録関連運営管理機関です。連絡先は「年金資産の残高の通知」などに書かれています。
- 75歳までに請求しなかった場合、資産は法務局に供託されます。
一時金で受け取ると、税金はどう計算される?
iDeCoの老齢給付金を一時金で受け取ると、退職所得とみなされます。受け取った金額から退職所得控除額を引き、原則として、その2分の1に税金がかかります。
退職所得の金額と、退職所得控除額(国税庁、2026年4月1日現在の法令)
退職所得の金額 =(受け取る金額 − 退職所得控除額)× 1/2
年数が20年以下:40万円 × 年数(80万円に満たない場合は80万円)
年数が20年超:800万円 + 70万円 ×(年数 − 20年)
iDeCoの一時金では、この「年数」に加入者期間を使います。企業型の確定拠出年金に加入していた期間がある場合は、重ならない期間を合算します。1年に満たない端数は、1年に切り上げます。
計算の例(会社の退職金がない場合)
前提:加入者期間20年、一時金600万円
退職所得控除額 = 40万円 × 20年 = 800万円
600万円は800万円より少ないので、退職所得は0円です。
退職所得には、所得税のほかに住民税(市町村民税6%、道府県民税4%)がかかります。
「退職所得の受給に関する申告書」を出す
- 申告書を出さないと、受け取る金額の20.42%が源泉徴収されます。その場合は、確定申告で精算します。
- 申告書には、ほかに受け取った退職金や一時金を書きます。書き方は、支払いをする機関の案内に従ってください。
年金で受け取ると、税金はどう計算される?
iDeCoの老齢給付金を年金の形で受け取ると、「公的年金等」に当たり、雑所得として計算します。その年に受け取った公的年金等の合計から、公的年金等控除額を引きます。国民年金や厚生年金の年金も、公的年金等に含まれます。
| 年齢と、公的年金等の収入の合計 | 公的年金等控除額 |
|---|---|
| 65歳未満で、130万円以下 | 60万円 |
| 65歳以上で、330万円以下 | 110万円 |
この表は、公的年金等以外の所得が1,000万円以下の場合です。収入の合計がこの金額を超えると、控除額は別の式で計算します。式は、国税庁のページで確認できます。
年金で受け取る場合の手数料
- 松井証券は、給付の手数料を「1回あたり440円」と案内しています(2026年10月時点)。
- 年金で受け取る場合に、受け取りのたびにかかるかどうかは、公式のページで確認できていません。受け取りの回数と手数料は、口座のある金融機関に確認してください。
- 受け取りを待つ間も、口座の管理の手数料(信託銀行の月66円など)はかかります。
会社の退職金もある場合は、順序と間隔で控除額が変わる
iDeCoの一時金と会社の退職金は、どちらも退職所得です。一定の期間内に両方を受け取ると、期間が重なる分だけ、後から受け取るほうの退職所得控除額が減ります。さかのぼる期間は、受け取る順序で違います。
| 受け取る順序 | さかのぼる期間 |
|---|---|
| 退職金が先、iDeCoの一時金が後 | 前年以前19年内 |
| iDeCoの一時金が先、退職金が後(一時金を2026年1月1日以後に受け取った場合) | 前年以前9年内 |
| iDeCoの一時金が先、退職金が後(一時金を2025年12月31日までに受け取った場合) | 前年以前4年内 |
「前年以前9年内」は、令和7年度の税制改正で決まりました。それまでは4年内だったため、「iDeCoを先に受け取り、5年空けて退職金を受け取る」と、控除額は減りませんでした。2026年1月1日以後に受け取る一時金には、この方法は当てはまりません。
控除額はいくら減る?
減るのは、重なる期間の年数(1年未満は切り捨て)をもとに計算した、退職所得控除額に当たる金額です。
先に受け取った金額が、そのときの退職所得控除額より少なかった場合は、重なる期間を短く数えます。先に受け取った金額が800万円以下なら、「受け取った金額 ÷ 40万円」(1未満は切り捨て)の年数で計算します。
計算の例(iDeCoの一時金が先、5年後に退職金)
前提:60歳でiDeCoの一時金600万円(加入者期間20年。2026年1月1日以後の受け取り)。65歳で退職金1,500万円(勤続38年。iDeCoの加入者期間はすべて勤続期間と重なる)
1. 勤続38年の退職所得控除額 = 800万円 + 70万円 × 18年 = 2,060万円
2. 重なる期間 = 600万円 ÷ 40万円 = 15年(600万円は、20年分の控除額800万円より少ないため)
3. 減る金額 = 40万円 × 15年 = 600万円
4. 退職所得控除額 = 2,060万円 − 600万円 = 1,460万円
5. 退職所得 =(1,500万円 − 1,460万円)× 1/2 = 20万円
6. 税金 = 所得税と復興特別所得税 20万円 × 5% × 1.021 = 10,210円、住民税 20万円 × 10% = 20,000円、合計 約3.0万円
同じ前提で、改正前の決まり(4年内)なら、5年空いているので控除額は減らず、退職金の退職所得は0円でした。この例では、改正によって約3.0万円の差が出ます。
試算の前提
- iDeCoの一時金600万円そのものは、控除額800万円に収まるので、退職所得は0円です。
- 退職金やiDeCoの金額が大きいほど、減る控除額と税金は大きくなります。先に受け取った金額が控除額以上の場合は、重なる期間を短く数える決まりは使えません。
- 2027年分からは、復興特別所得税が1.1%になり、防衛特別所得税1%が加わります。合わせた率は2.1%で、この計算は変わりません。
- 重なる期間は、加入や入社の日付で変わります。実際の計算は、退職金を支払う会社や税務署に確認してください。
同じ年に退職金とiDeCoの一時金を受け取る場合は、2つを合計して計算します。後から支払う側に、申告書と、先に受け取った分の源泉徴収票を出します。
自分の場合を確かめる手順
-
iDeCoの加入者期間と残高を確認する
「年金資産の残高の通知」や、金融機関の加入者向けのサイトで確認します。企業型の確定拠出年金から移した資産がある場合は、その期間も確認します。
-
会社の退職金の見込み額と、受け取る時期を確認する
勤め先の退職金の決まりで、金額と支払いの時期、勤続年数の数え方を確認します。
-
順序と間隔を、上の表に当てはめる
退職金が先か、iDeCoの一時金が先か。その間が19年内か、9年内か。当てはまる場合は、控除額が減る前提で計算します。
-
年金で受け取る場合は、ほかの年金と合計する
iDeCoの年金は、国民年金や厚生年金の年金と合計して、公的年金等控除額を引きます。受け取る年ごとに、合計がいくらになるかを見ます。
-
金融機関に、選べる受け取り方と手数料を確認する
併用ができるか、年金の期間と回数、給付の手数料のかかり方は、金融機関ごとに違います。
注意点
受け取り方を決める前に
- 「どちらが有利か」は、人によって変わります。退職金の額と時期、加入者期間、ほかの年金や給与の額で、税金は大きく変わります。
- 税制は変わることがあります。受け取るときの決まりで計算されます。
よくある質問
一時金と年金は、どちらで受け取るのがよいですか?
条件によって変わります。一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除を使うので、退職金の額と時期、加入者期間、ほかの年金の額を当てはめて比べる必要があります。この記事の手順で、自分の数字を確認してください。
iDeCoを先に受け取り、5年空けて退職金を受け取れば、控除額は減りませんか?
2026年1月1日以後にiDeCoの一時金を受け取った場合は、減ります。退職金を受け取る年の「前年以前9年内」に一時金を受け取っていると、重なる期間の分だけ控除額が減ります。
60歳になったら、すぐに受け取らないといけませんか?
受け取りの開始は、75歳になるまでの間で選べます。75歳までに請求しなかった場合、資産は法務局に供託されます。
退職金とiDeCoの一時金を、同じ年に受け取るとどうなりますか?
2つを合計して、退職所得を計算します。勤続年数は、最も長い期間に、重ならない期間を足して数えます。
「退職所得の受給に関する申告書」を出し忘れたら、どうなりますか?
受け取る金額の20.42%が源泉徴収されます。確定申告をすると、申告書を出した場合と同じ計算で精算されます。
出典
- 国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)(確認日:2026年10月5日)
- 国税庁 No.2732 退職手当等に対する源泉徴収(確認日:2026年10月6日)
- 国税庁 No.2735 同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき(確認日:2026年10月6日)
- 国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係(確認日:2026年10月6日)
- 国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」第3 退職所得の源泉徴収事務(確認日:2026年10月6日)
- 国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」第4 公的年金等の源泉徴収事務(確認日:2026年10月6日)
- 財務省「令和7年度税制改正の大綱」(確認日:2026年10月6日)
- 総務省「退職所得に対する住民税の特別徴収」(確認日:2026年10月6日)
- iDeCo公式サイト「給付について」(確認日:2026年10月6日)
- iDeCo公式サイト「加入資格・掛金・受取方法等」(確認日:2026年10月6日)
- 松井証券「iDeCoの手数料」(確認日:2026年10月6日)
- 松井証券「iDeCoとは」(確認日:2026年10月6日)
更新履歴
- 2026年10月6日:公式サイトで確認し直し、全体を書き直しました。以前の記事は、改正後の税金の増え方を「約18.1万円」と試算していましたが、国税庁の決まり(先に受け取った金額が控除額より少ない場合は、重なる期間を短く数える)を当てはめておらず、同じ前提で約3.0万円に訂正しました。「50歳を過ぎて加入すると60歳では受け取れない」という記述は、通算加入者等期間で決まるため削除しました。社会保険料と公的年金の繰下げについての記述は、この記事で確認できる範囲を超えるため削除しました。広告リンクは外しました。
本記事は、官公庁と金融機関の公式サイトの情報と、それにもとづく試算で構成しています。試算は一定の前提を置いた概算で、実際の税額や将来の結果を保証するものではありません。税制と制度は変わることがあります。受け取り方を決める前に、口座のある金融機関、退職金を支払う会社、税務署で、最新の内容を確認してください。



