生命保険を見直す前に確認したい公的保障の全体像と3つの穴

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この記事の要点

  • 高額療養費は2026年8月に自己負担限度額が引き上げ。年収約370〜770万円で医療費100万円なら、自己負担は約92,940円(旧制度では約87,430円)。
  • 「限度額で頭打ち」は正確ではありません。差額ベッド代・食事代・先進医療の技術料は対象外で全額自己負担。しかも暦月単位のため、入院が月をまたぐと2か月分かかります。
  • 傷病手当金は健康保険の被保険者のみ。国民健康保険(自営業・フリーランス)にはありません。会社員でも最初の3日間は支給されず、支給期間は通算1年6か月。
  • 子のいない配偶者は遺族基礎年金を受け取れません。対象は「子のある配偶者」または「子」だけ。自営業者は遺族厚生年金も対象外です。
  • 生命保険料の平均は個人で月約1.4万円、世帯で月約2.9万円。別々の調査なので混同すると2倍以上ずれます。

最終更新:2026年9月9日 / 記事の作成・確認:Asset Lab 編集部(出典は記事末尾に記載)

結論から言うと、日本の公的保障は「厚い部分」と「穴」がはっきり分かれています。医療費は高額療養費制度でかなり抑えられますが、傷病手当金と遺族厚生年金は自営業・フリーランスには存在しません。遺族基礎年金も子のいない配偶者は受け取れません。

つまり「公的保障があるから民間保険は不要」とは言えず、自分がどちら側にいるかで答えが変わります。本記事では、保険を見直す前に把握しておくべき公的保障の範囲と穴を、厚生労働省・日本年金機構・全国健康保険協会の一次情報で整理します(2026年9月時点で確認)。

生命保険料は平均で月いくら払っている?

まず現在地を押さえます。生命保険文化センターの調査では、個人と世帯で数字が異なります。この2つは別の調査なので、混同すると2倍以上ずれます。

区分 年間払込保険料 月額換算 出典調査
個人(18〜79歳) 17.1万円 約1.4万円 2025年度「生活保障に関する調査」
世帯 35.3万円 約2.9万円 2024年度「生命保険に関する全国実態調査」

個人で見れば月約1.4万円、世帯で見れば月約2.9万円。ご自身の保険料がこの水準を大きく超えているなら、内訳を確認する価値があります。逆に下回っているなら、削減余地は限定的です。

高額療養費で自己負担はいくらまで抑えられる?

2026年8月から自己負担限度額が引き上げられました。それ以前の数字を載せている記事が多いので、注意が必要です。

年収約370〜770万円(70歳未満)の場合、2026年9月時点の限度額はこう計算します。

85,800円 +(医療費 − 286,000円)× 1%
医療費が1か月100万円かかった場合 自己負担額
2026年7月まで(旧制度) 約87,430円
2026年8月以降(現行) 約92,940円

直近12か月に3回以上該当した場合は、4回目から44,400円に下がります(多数回該当)。あわせて、年間の自己負担上限として53万円が設けられています。

2027年8月からさらに変わる予定

厚生労働省の資料では、2027年8月から「年収約370〜770万円」の区分が3つに分割される予定です(施行前の予定であり、変更の可能性があります)。

  • 年収約370〜510万円:85,800円+(医療費−286,000円)×1%
  • 年収約510〜650万円:98,100円+(医療費−327,000円)×1%
  • 年収約650〜770万円:110,400円+(医療費−368,000円)×1%

窓口での支払いを抑えるために何を準備すればよいかは、高額療養費を利用するときの手続きと注意点で詳しく整理しています。

高額療養費でカバーされないものは何?

「限度額で頭打ち」という説明は正確ではありません。次の費用は高額療養費の対象外で、全額自己負担になります。

  • 差額ベッド代(個室・少人数部屋を希望した場合)
  • 入院時の食事代
  • 先進医療の技術料
  • 通院の交通費、家族の付き添い費用など

さらに、高額療養費は暦月(1日〜末日)単位で計算されます。同じ入院でも月をまたぐと、2か月分の限度額がかかります。ここが実際の自己負担が想定より膨らむ主な理由です。

働けなくなったら傷病手当金はいくら出る?

傷病手当金は健康保険の被保険者(主に会社員)の制度です。国民健康保険には原則としてありません。誤解されやすい点を整理します。

項目 内容
支給開始 連続する3日間の待期を経て、4日目から。最初の3日間は支給されない
支給額 支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 3分の2(賞与は反映されない)
支給期間 「最長」ではなく通算1年6か月(2022年1月から通算化)
対象者 健康保険の被保険者。自営業・フリーランス(国民健康保険)は対象外

「給与の3分の2」ではなく「標準報酬月額の平均の3分の2」である点に注意してください。賞与の比重が大きい人ほど、実際の手取りとの差が開きます。

申請時の確認事項は、傷病手当金をもらい損ねないための3つの注意点もあわせて確認してください。

遺族年金は誰がいくら受け取れる?

ここが公的保障で最も大きな穴です。「万一のときは遺族年金がある」という前提が成り立たない世帯があります。

子のいない配偶者は遺族基礎年金を受け取れる?

受け取れません。遺族基礎年金の対象は「子のある配偶者」または「子」に限られます。ここでいう「子」とは、18歳到達年度の3月31日までにある子(障害等級1・2級の場合は20歳未満)です。

したがって、末子が18歳到達年度末を過ぎると遺族基礎年金は終わります。「毎月ずっと支給され続ける」制度ではありません。

令和8年度の額は次のとおりです。

  • 基本額:年 847,300円(1956年4月2日以後生まれ)/年 844,900円(それ以前生まれ)
  • 子の加算:1人目・2人目 各243,800円/3人目以降 各81,300円

自営業者の遺族は遺族厚生年金を受け取れる?

受け取れません。遺族厚生年金は厚生年金の被保険者等が対象です。自営業・フリーランス(国民年金の第1号被保険者)は対象外で、遺族基礎年金しかありません。

会社員の場合、遺族厚生年金は老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。ただし、夫の死亡時に30歳未満で子のない妻は、支給が5年間で終了します。40歳以上65歳未満で一定要件を満たす妻には、中高齢寡婦加算(令和8年度 年635,500円)が加算されます。

2025年の年金制度改正で遺族年金はどう変わる?

2028年4月施行予定で、遺族厚生年金の男女差の解消と、子のない配偶者への5年間の有期給付化が予定されています。有期給付加算により給付水準は約1.3倍になる見込みです。既に受給している方、60歳以降に受給権が発生する方、2028年度に40歳以上の女性には経過措置があり、影響しません。施行前の内容であり、今後変更される可能性があります。

受給要件や請求時の確認事項は、遺族年金をもらい損ねないための3つの注意点で詳しく整理しています。

会社員と自営業で公的保障はどれだけ違う?

ここまでを整理すると、必要な民間保険の量は立場によって大きく変わります。

制度 会社員 自営業・フリーランス
高額療養費制度 あり あり
傷病手当金 あり なし
遺族基礎年金 子がいる場合のみ 子がいる場合のみ
遺族厚生年金 あり なし

自営業・フリーランスで、かつ子どもがいない場合、公的な死亡保障・就業不能保障はほぼゼロです。この層が民間保険を削るのは危険です。逆に、子どものいる会社員は公的保障が最も手厚く、民間保険が過剰になっている可能性があります。

どの保険を見直しの対象にすべき?

感情ではなく、公的保障のカバー範囲に基づいて仕分けます。ただし、一律に解約を勧めるものではありません。契約時期によっては予定利率が高く、維持したほうが有利な契約もあります。

保険種別 判定 確認すべきこと
貯蓄型・積立型保険 要確認 契約年と予定利率を確認する。バブル期前後の契約は利率が高く、解約すると不利になる場合がある。返戻率と残り払込期間を必ず試算してから判断する。
医療・がん保険(過剰特約) 見直し候補 高額療養費でカバーされる部分と重複していないか。ただし差額ベッド代・先進医療は対象外なので、そこを埋める特約かどうかで判断が変わる。
掛け捨ての定期死亡保険 条件付き維持 子どもがいる世帯、および自営業・フリーランス世帯は優先度が高い。末子の独立時期に合わせて保障額と期間を設計する。

見直しを検討する前に確認すべきことは?

保険の解約は、取り消せない場合があります。次の3点を必ず先に確認してください。

  • 既往歴があると再加入できないことがある:現在通院中、または重大な病歴がある場合、一度解約すると新しい保険に入れない、あるいは条件付きになる可能性があります。解約は、新しい契約が成立してから行ってください。
  • 貯蓄型は元本割れの可能性がある:契約から年数が浅いうちに解約すると、解約返戻金が払込総額を下回ります。
  • 生命保険料控除が減る:保険料が減ると所得控除も減るため、税負担がわずかに増えます。削減額そのままが手取り増になるわけではありません。

見直しをおすすめしない人

  • 生活防衛資金がない人:数十万円の自己負担に現金で対応できない状態では、最低限の医療保険を残しつつ、まず生活費3〜6か月分の現金を確保するのが先です。
  • 自営業・フリーランス:傷病手当金も遺族厚生年金もないため、就業不能・死亡リスクへの備えは会社員より厚く必要です。
  • 子のいない配偶者がいる世帯:遺族基礎年金の対象外です。死亡保障を削る前に、残された側の生活費を試算してください。

浮いた保険料は何に回すか

見直しで保険料が下がった場合、その分をそのまま消費に回すと家計は変わりません。浮いた金額を新NISAの積立に回す設定にして、初めて意味が出ます。収入を増やさずに積立額を増やす、という考え方です。

ただし順序があります。生活防衛資金(生活費3〜6か月分)が確保できていない段階では、投資より先に現金を厚くしてください。資産&実利 最適化シミュレーターで、自分の場合いくら浮いて、それを積み立てるとどうなるかを確認できます。

保険証券を見せて、公的保障との重複を確認する

全国対応・訪問&オンライン相談可能。現在の契約内容と公的保障の範囲を突き合わせて確認できます。相談自体は無料ですが、提案される商品には販売手数料が発生する場合があるため、その場で契約せず持ち帰って検討することをおすすめします。

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出典

【免責事項】
本記事に記載した制度内容・金額は、2026年9月時点で厚生労働省・日本年金機構・全国健康保険協会・生命保険文化センターの公表情報を確認して作成したものです。制度は改正される可能性があり、2027年8月の高額療養費区分の細分化および2028年4月の遺族厚生年金の見直しは、いずれも施行前の予定です。
実際に受けられる給付額は、加入している健康保険・年金の種別、所得区分、家族構成によって異なります。保険の見直し・解約の最終判断は、ご自身の家計状況・健康状態を踏まえ、ご自身の責任において行ってください。本記事は特定の金融商品の購入・解約を推奨するものではありません。

よくある質問

Q. 高額療養費で自己負担はいくらまで抑えられますか?

年収約370〜770万円(70歳未満)の場合、2026年9月時点の限度額は「85,800円+(医療費−286,000円)×1%」です。医療費が1か月100万円なら自己負担は約92,940円になります(2026年7月までの旧制度では約87,430円)。直近12か月に3回以上該当した場合は4回目から44,400円に下がり、年間の自己負担上限として53万円も設けられています。

Q. 高額療養費でカバーされないものは何ですか?

差額ベッド代(個室・少人数部屋を希望した場合)、入院時の食事代、先進医療の技術料、通院の交通費や家族の付き添い費用は対象外で全額自己負担です。また高額療養費は暦月(1日〜末日)単位で計算されるため、同じ入院でも月をまたぐと2か月分の限度額がかかります。

Q. 傷病手当金は誰がいくらもらえますか?

健康保険の被保険者(主に会社員)の制度で、国民健康保険には原則としてありません。連続する3日間の待期を経て4日目から支給され、額は「支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均÷30×3分の2」です(賞与は反映されません)。支給期間は「最長」ではなく通算1年6か月です(2022年1月から通算化)。

Q. 子どもがいない場合、遺族年金は受け取れますか?

遺族基礎年金は受け取れません。対象は「子のある配偶者」または「子」に限られ、ここでいう「子」は18歳到達年度の3月31日までにある子(障害等級1・2級の場合は20歳未満)です。会社員であれば遺族厚生年金(老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3)がありますが、自営業・フリーランスは対象外です。

Q. 会社員と自営業でどれだけ違いますか?

高額療養費はどちらもありますが、傷病手当金と遺族厚生年金は会社員のみです。自営業・フリーランスで、かつ子どもがいない場合、公的な死亡保障・就業不能保障はほぼゼロになります。この層が民間保険を削るのは危険です。逆に、子どものいる会社員は公的保障が最も手厚く、民間保険が過剰になっている可能性があります。

Q. 保険を見直す前に確認すべきことは?

3つです。①既往歴があると再加入できないことがあるため、解約は新しい契約が成立してから行う ②貯蓄型は契約から年数が浅いうちに解約すると返戻金が払込総額を下回る ③保険料が減ると生命保険料控除も減るため、削減額そのままが手取り増になるわけではない。また生活防衛資金がない状態で削るのは順番が逆です。