傷病手当金は働けなくなったら自動でもらえる制度ではない?もらい損ねないための3つの注意点

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※本記事は情報提供を目的とした一般的な制度解説であり、個別の受給結果を保証するものではありません。また、生命保険の無料相談サービスへのアフィリエイト広告を含みます。

この記事の要点

  • 傷病手当金は健康保険の被保険者(主に会社員・公務員)向けの制度で、自営業・フリーランス(国民健康保険)にはありません。連続3日間の待期を含み4日以上働けないことなど、4つの条件を満たして初めて支給されます。
  • 支給額は「手取り給与の3分の2」ではなく、支給開始前12か月の標準報酬月額の平均÷30×3分の2。賞与は反映されません。
  • 支給期間は「連続」ではなく「通算」1年6か月(2022年1月の改正で通算化)。療養中に一時的に出勤した日はカウントされません。
  • 退職のタイミングを誤ると、退職後の継続給付を受け損ねることがあります。資格喪失日の前日時点で条件を満たしているかがポイントです。
  • 有給休暇を使った日は原則支給されません。有休は満額、手当金は3分の2のため、休み始めは有休を先に使う方が総受取額は多くなりやすいのが一般的です。

傷病手当金とは?対象になる4つの条件

傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の病気やケガで働けなくなり、給与が受けられないときに、生活を保障するために協会けんぽや健康保険組合から支給される制度です。対象になるのは健康保険の被保険者(主に会社員・公務員)で、国民健康保険に加入する自営業・フリーランスには原則としてありません。「体調を崩したら誰でも自動的にもらえる」制度ではなく、次の4つの条件をすべて満たして初めて支給されます。

条件内容
①業務外の事由業務上・通勤災害によるもの(労災保険の対象)は除く
②仕事に就けない状態療養担当者の意見等をもとに、本人の仕事内容を踏まえて判断される
③待期の完成連続する3日間(有給休暇・土日祝日も待期に含まれる)を経て、4日目以降も働けないこと
④給与の不支給休業中に給与が支払われていないこと(支払われていても手当金より少なければ差額を支給)

特に注意したいのが③の「待期」です。待期は3日間連続していることが条件で、有給休暇や土日祝日を使っても待期日数にカウントされます。逆に言えば、途中で1日でも出勤してしまうと待期はリセットされ、また連続3日間からやり直しになります。体調が悪くても「様子見で数日だけ出勤する」を繰り返すと、いつまでも待期が完成せず支給が始まらない、という事態になりかねません。

支給される金額はいくら?「手取りの3分の2」ではない理由

傷病手当金の1日あたりの支給額は、次の計算式で決まります。

支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 3分の2

ここでよくある誤解が、「手取り給与の3分の2がもらえる」というものです。正しくは「標準報酬月額」(≒社会保険料の算定に使う月収)の3分の2であり、賞与(ボーナス)は計算に反映されません。例えば標準報酬月額が30万円の人であれば、1日あたり300,000円÷30×3分の2=約6,667円、30日換算で約20万円が目安になります。年収に占める賞与の割合が大きい人ほど、標準報酬月額(≒月収部分だけ)を基準にした支給額は、体感の手取りより目減りして感じられます。

なお、支給開始日までの被保険者期間が12か月に満たない場合は、①在籍している健康保険での直近の標準報酬月額の平均、②協会けんぽ全体の標準報酬月額の平均(令和7年3月31日以前は30万円、令和7年4月1日以降は32万円)、のいずれか低い方を基準に計算されます。

支給される期間は「通算」1年6か月—2022年1月の改正で何が変わったか

支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。「通算」という言葉が入っているのには理由があります。2022年1月1日の改正より前は、支給開始日から暦の上で1年6か月が経過した時点で、途中どれだけ出勤していたかに関わらず支給が打ち切られていました。改正後は、実際に手当金を受け取った日数の合計が1年6か月に達するまで支給される仕組みに変わっています。

つまり、治療のために一時的に職場復帰し、その間は給与が出て手当金の支給がなかった期間があっても、その分はカウントされず、後から同じ傷病で再び働けなくなったときに残りの日数を使えます。この改正は、令和3年12月31日時点でまだ支給開始から1年6か月を経過していない人(目安として令和2年7月2日以降に支給が始まった人)から適用されています。「治療と仕事の両立」がしやすくなった変更ですが、裏を返せば一度も手当金を受け取らないまま自己判断で早期に復職・退職してしまうと、この制度のメリットを活かせないまま権利だけが失われることもあるため、次の章の注意点とあわせて確認しておく価値があります。

もらい損ねないための3つの注意点

支給要件や金額の計算式を知っていても、タイミングや使い方を誤ると受け取れる額が減ったり、権利そのものを失ったりします。特に注意したい3つを解説します。

①退職・転職のタイミングを誤ると、退職後の継続給付を受け損ねる

在職中に受給していた傷病手当金は、条件を満たせば退職後も継続して受け取れます。継続給付を受けるための条件は次の2つです。

  • 資格喪失日(退職日の翌日)の前日までに、継続して1年以上の被保険者期間があること
  • 資格喪失日の前日時点で、現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態(待期が完成し、働けない状態)であること

逆に言えば、退職日の前日にまだ待期が完成していなかったり、たまたまその日だけ体調が良くて「働ける状態」と判断されたりすると、退職と同時に権利を失う可能性があります。また、一度でも「仕事に就くことができる状態」まで回復すると、その後同じ傷病で再び働けなくなっても、退職後の継続給付は再開されません。「治りかけたから」と早めに退職・転職の手続きを進めてしまうと、かえって給付を受け損ねることがあるため、退職を検討している場合は、資格喪失日の前日時点でどちらの条件も満たしているかを事前に確認しておくことをおすすめします。

②有給休暇は先に使う方が、総受取額は多くなりやすい

休業中に給与が支払われている日は、傷病手当金は原則支給されません(給与が手当金より少ない場合のみ差額が支給されます)。有給休暇を取得した日も「給与が支払われた日」として扱われるため、その日は手当金の対象外になります。

ここで意識したいのは、有給休暇は給与の全額(10割)が出るのに対し、傷病手当金は標準報酬月額の3分の2にとどまるという違いです。そのため、休み始めの段階では有給休暇を先に消化し、有休を使い切ってから傷病手当金の受給に切り替える方が、同じ休業期間でも総受取額は多くなるケースが一般的です。ただし、有休の残日数や、傷病手当金の申請には待期3日間が必要なことを踏まえたスケジュール、会社ごとの休職ルールによって最適な順番は変わるため、実際に休業する前に勤務先の総務・人事担当に相談しておくと安心です。

③出産手当金・老齢年金と重なる期間は調整される

該当する人は限られますが、他の給付と重なる期間には調整が入る点も押さえておきたいポイントです。

  • 出産手当金との調整:出産手当金と傷病手当金の両方を受け取れる期間は、出産手当金が優先して支給されます。傷病手当金の方が金額が多い場合は、その差額が支給されます。
  • 老齢年金との調整:退職後の継続給付を受けている間に老齢厚生年金などの老齢・退職を理由とする年金を受け取るようになると、原則として傷病手当金は支給されません。ただし、年金額の360分の1が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。

「両方満額もらえる」と思い込んでいると、想定より少ない金額しか振り込まれず戸惑うことになりかねません。該当しそうな人は、申請前に勤務先や協会けんぽの窓口に確認しておくと安心です。

申請方法

「健康保険傷病手当金支給申請書」に、本人記入欄・事業主証明欄・療養担当者(医師)記入欄をそれぞれ記入してもらい、加入している協会けんぽの支部(健康保険組合の場合はその組合)に提出します。給与の支払い状況の証明が必要になるため、休業した期間の終了後、まとめて申請するのが一般的です。申請内容の確認に時間がかかるため、振込までには一定の日数がかかる点も踏まえてスケジュールを考えておくとよいでしょう。

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免責事項

本記事は公的医療保険制度の一般的な解説であり、個別の受給可否や受給額を保証するものではありません。制度の詳細は今後変更される可能性があるため、最新情報は加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合等)の窓口や公式サイトでご確認ください。

出典

よくある質問

Q. 自営業やフリーランスでも傷病手当金はもらえますか?

いいえ。傷病手当金は健康保険の被保険者(主に会社員・公務員)向けの制度で、国民健康保険には原則としてありません。

Q. 傷病手当金は退職後も受け取れますか?

条件付きで可能です。資格喪失日(退職日の翌日)の前日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、かつ資格喪失時点ですでに傷病手当金を受けているか、受けられる状態であれば、退職後も同じ傷病について通算1年6か月まで継続して支給されます。ただし、一度仕事に就ける状態に回復すると、その後再び働けなくなっても継続給付は受けられません。

Q. 有給休暇を使った日も傷病手当金はもらえますか?

原則もらえません。給与が支払われている日は傷病手当金は支給されない仕組みで、有給休暇の取得日は給与が支払われた日として扱われます。ただし、有給休暇中の給与額が傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されます。

Q. 支給期間の「通算1年6か月」とはどういう意味ですか?

2022年1月の改正で、支給開始日から暦の上で1年6か月が経過したら終了ではなく、実際に手当金を受け取った日数の合計が1年6か月に達するまで支給される仕組みに変わりました。療養の途中で一時的に出勤した期間はカウントされないため、その分長く制度を利用できます。

Q. 出産手当金や年金と同時にはもらえませんか?

出産手当金と両方の受給条件を満たす期間は、出産手当金が優先して支給されます(傷病手当金の方が高い場合は差額を支給)。また、退職後の継続給付を受けている間に老齢厚生年金などを受け取るようになると、原則として傷病手当金は支給停止となり、年金額の360分の1が傷病手当金の日額より少ない場合のみ差額が支給されます。